T&M通信
2014.12.01
T&M通信 12月号
● 今月の経営チェックポイント
● 着眼点
軽減税率は止めてください
税理士 田中彰
来年の消費税率引き上げ延期と衆議院解散が決定いたしました。国内の景気に鑑み税率引き上げを先送りしたことは妥当かもしれませんが、政治が真に国民生活の幸福を考えるよりも政権の抗争が優先されている感が露呈された気がします。政治家にとって当選と落選あるいは政権を取るか否かは、天国と地獄の差があるのだから仕方がないことでしょうか。各党心地よい政策を掲げて選挙がスタートしますが、消費税についての軽減税率の導入だけは止めて欲しいものです。
第一に、一定の増税のために消費税率を上げる訳ですから、食料品等に軽減税率が適用されれば財務省はどこかで穴埋めしようと考え、他の消費財の消費税率が大きくなる可能性があります。まさしく「朝三暮四」の論理ではありませんか。
次に、消費税は相対的に低所得者層に負担が大きい(逆進性)と考えられるので生活必需品には軽減税率を導入すべきとの事ですが、高所得者もその恩恵に与る訳ですから逆進性の解消にならないという事です。
そして、何よりも複数税率による実務の煩雑さとトラブルが考えられます。消費税はすべての消費財に「広く浅く」課税し、簡素な税法を売りに創設されました。それが税率も創設時の倍を超え、さらに上がり続けると予想されます。内容的にも課税非課税の境界など複雑な税法になりつつあります。判断や理解の違いによる税理士とその関与先との損害賠償請求の件数が最大である税法と言われています。軽減税率制度の詳細は現在明らかではないですが、諸外国でも課題が多い軽減税率の導入だけは是非回避して欲しいものです。
● 自動車等での通勤手当の非課税限度額の改正
交通用具を使用した通勤手当の計算において“国税庁の非課税限度”を参考にしておられる会社が多いと思いますが、この金額が平成26年4月1日以降に支払われる分から改正されております。ご注意ください。
片道の通勤距離 |
改正前 |
改正後 |
2Km以上 10Km未満 |
4,100円 |
4,200円 |
10Km以上 15Km未満 |
6,500円 |
7,100円 |
15Km以上 25Km未満 |
11,300円 |
12,900円 |
25Km以上 35Km未満 |
16,100円 |
18,700円 |
35Km以上 45Km未満 |
20,900円 |
24,400円 |
45Km以上 55Km未満 |
24,500円 |
28,000円 |
55Km以上 |
24,500円 |
31,600円 |
(文責 中澤 里美)
● 医療費控除について
自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合には、一定の金額の所得控除を受けることができます。これを医療費控除といいます。その年に支払った医療費のうち10万円を超える部分の金額をその年分の所得税から控除する制度です。医療費には病院で治療のために支払ったもの以外にも、通院のための交通費(タクシー代はやむを得ない場合のみ)、治療のために薬局で購入した風邪薬なども含まれます。また、以前は認められていなかったレーシックに係る費用も現在では認められるようになっています。
医療費控除は年末調整では出来ませんので、確定申告が必要になります。例年年末調整しか行わないサラリーマンの方も多額の医療費を支出している場合には、確定申告をすれば税金が還付される可能性があります。
また、医療費控除を受けるためには領収書などを確定申告書に添付するか、確定申告書を提出する際に提示する必要がありますので来年まで保管しておいてください。
(文責 堀 聡彦)
● 年末調整について
12月になり年末調整の時期になりました。なぜ年末調整をしなければならないのか?毎月の給料支払の時には所定の「源泉徴収税額表」により所得税等が給料から控除されています。しかし、年の途中で扶養親族の異動があったり、配偶者特別控除や生命保険料、地震保険料、小規模企業共済掛金、住宅借入金等特別控除等の控除を「扶養控除等(異動)申告書」、「保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書」を提出することにより確認し、1年間の給料総額が確定した時点で各種の控除額を反映して年間所得税を確定します。そうやって計算した年税額と月々に控除された税額とに過不足がある場合の所得税額の徴収、還付の計算をする手続きが「年末調整」なのです。ただし、住宅借入金等特別控除の初年度分、医療費控除等は年末調整では手続きできませんので、確定申告をしなくてはなりません。
(文責 田中 恵子)
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